トークセッション「温泉地のユニバーサルデザイン」

 ○ コーディネーター 
   ㈱ユーディット代表取締役社長 関根 千佳 氏

 ○ パネラー
   長崎国際大学学長 潮谷 義子 氏
   沖縄県久米島観光協会久米島食物アレルギー対応委員会委員長 平良 博一 氏
   外国語講師 村川 カルミナ 氏
   佐賀嬉野バリアフリーセンター会長 小原 健史 氏

議 論 概 要


議論趣旨




【コーディネーター】
 ㈱ユーディット代表取締役社長
 関根 千佳 氏
 増加する海外からの観光客や、三世代・ファミリー層への配慮といった、観光地におけるユニバーサルデザインは、今や日本の重要課題です。多くの観光資源の中でも、「温泉」は日本独自の癒しの文化であり、多様な年代やニーズを持つお客様に満足していただく必要があり、これからの温泉地には、アレルギーなどに配慮した食事、多言語に対応したサービスなどが必須です。
 このセッションでは、温泉地に求められる様々なユニバーサルデザイ ンの視点を、多彩なパネラーから語っていただき、嬉野から世界に発信しようとしている新しい旅のスタイルやおもてなしのユニバーサルデザインについて、共に探っていきます。
                                                          

事例発表・話題提供


【パネラー】
 佐賀嬉野バリアフリーツアー
 センター会長 小原 健史 氏
 佐賀嬉野バリアフリーセンター(以下「BFTC」)は、三重県の伊勢志摩BFTCの理事長との出会いを経て、高齢者、障害者、外国人の方々に対し佐賀県内及び西九州全体の観光の情報提供、旅館・ホテル等のユニバーサルデザイン化の推進を目的として平成19年12月に創設しました。
 現在、高年齢、身体的、精神的、外国語の4つのバリアをクリアすべく、ニューミックステニス大会等のイベントやユニバーサルデザインに関する講演会・研修会の開催、ipadを活用したユニバーサルデザイン客室利用者の意見・感想の収集など多角的な事業を展開しています。
 また、初めての人でも温泉の入り方が分かる「温泉ピクトグラム」を佐賀県、博報堂ユニバーサルデザインと共同で開発しましたので、この大会を契機に全国に向けて情報発信したいと思います。 




【パネラー】
 沖縄県久米島観光協会久米島
 食物アレルギー対応委員会委員長
 平良 博一 氏
  現在、人口の約2%、乳幼児から小学校までの約5%~10%の方は何らかのアレルギーを持っていると言われています。また、アレルギーを持つ子供がいるいる家族は、家族旅行を諦めたり、宿泊施設に自ら炊飯器を持参するなど多大な苦労をされています。
 久米島では、この現状を踏まえ、久米島まで来ていただく他の地域にない理由の創出、アレルギーを持つ家族の切実なニーズ等に対応できる旅行商品の開発に取り組み、10品目除去のアレルギー対応食の提供、「久米島コンシェルジュ」による旅行のコーディネート、公立久米島病院による24時間救急医療体制でのサポートを行っています。
 平成20年から食物アレルギー対応に関する事業を始めて、現在600名弱の家族の方から来島され、たくさんの喜びの声をいただいていますので、今後もこの事業を続けていきたいと思います。




【パネラー】
 外国語講師
 村川 カルミナ 氏
  私が経験した日本の温泉は、とても素敵であり、エキゾチックでユニークでしたが、知らない人の前で洋服を脱いで入浴することは母国にはない入浴方法でしたので、とてもカルチャーショックを受けました。
 温泉について諸外国の方々と話をすると、水着を着用せずに裸で入浴する日本の文化に驚かれますし、温泉は「熱い」というイメージを持たれているようです。また、温泉の清潔感、例えば、感染病が移るのではないか等の不安を持たれているようです。
 日本に限らず多くの国ではストレス社会になっていますが、私はストレス解消の場所は「温泉」と考えています。温泉は年齢を問わず誰でも楽しめる場所であり、美容や健康にも良いので、その効果をもっとPRしていただきたいと思います。



【パネラー】
 長崎国際大学学長
 潮谷 義子 氏
  多様な方々を想像して、この方々が本当に快適であるということを経験するためにはどうすればいいか、ということを想像したり作り出したりすることもユニバーサルデザインです。例えば、嬉野で取り組まれている外国語表示や温泉ピクトグラム、また、盲導犬、手すりや呼鈴の設置箇所などもユニバーサルデザインの視点で対応する必要があります。 
 ユニバーサルデザインは、プロセスを重視しながらエンパワーメントしていくこと、完結型ではなくスパイラルアップしていくことが重要です。プロセス重視、エンパワーメント、スパイラルアップ、パートナーシップを協働で実施することにより、「嬉野ここにあり」と全国に向けて自己主張できる姿になっていくと思います。
 また、ユニバーサルデザインは社会を変革し、新しい価値を生み出していくことができるので、多様な方々を想像して考えていただければ非常に良いものが出来上がるのではないかと思います。
                                                          

質疑応答


 ◎関根氏
   ユニバーサルデザインは、どちらかと言うとハードウェアに注目が集まりますが、パネラーの皆さんの
  話にもあるように、ソフトウェアも非常に大事であり、例えば、ユニバーサルデザイン客室を整備する
  ことだけでなく、外国語対応や堪能な手話ができるスタッフを揃えることもユニバーサルデザインだと考
  えます。また、ホームページ、カタログ等の色使いも配慮していただく必要があります。まずは、できるこ
  とから変えていきましょう。
   それでは、パネラーの皆さんにマイクをお返しします。

 ◎潮谷氏
   高齢者が多くなると、美味しい食べ物を噛む咀嚼力が弱くなる方も多くなりますが、嬉野ではどのよう
  な配慮がなされてますか。

 ◎小原氏
   嬉野温泉の旅館で、咀嚼力が弱くなった方に対して、刻み食やミキサー食を提供することがあります
  が、多様なものをミキサーに入れると灰色になるため、食べ物をプリン状で提供できる凍結含浸法を今
  後取り入れていきたいと考えています。

 ◎関根氏
   「美味しくなければユニバーサルデザインではない」が私の持論ですが、美味しそうに食べられるユニ
  バーサルデザイン食やアレルギー食が増えてくることが、これからの高齢化社会にとって大事なことであ
  ると考えます。

 ◎潮谷氏
   全国大会が嬉野で開催されていますので、嬉野のまちが本当に素敵に変わって欲しいとの願いがあり
  ます。「行き良いまちは暮らし良いまち、また行きたくなるまち」ですが、佐賀嬉野BFTCをこれからどのよ
  うにしていこうと考えられていますか。

 ◎小原氏
   佐賀嬉野BFTCは、観光協会や旅館組合の方々が中心となり活動していますので、ビジネスとして捉え
  ています。ひとにやさしく、かつ、利益が得られるようなシステムでなければ活動を継続していくことは困
  難と思います。これからの日本は少子高齢化がさらに進み、外国人観光客が増加しますので、今後、
  各地域にあるBFTCやユニバーサルデザインセンターが重要視されると考えます。

 ◎関根氏
   日本の観光地は、これから外国人観光客や高齢者が増えています。また、2代目、3代目の方々が来
  てくれるような観光地であり続けるためには、ファミリー層にもやさしいことが大事です。嬉野の温泉地も
  0歳児から100歳の方まで来ていただけるようなまちになってほしいと思います。
   嬉野について、何かありませんか。

 ◎平良氏
   久米島の食物アレルギー対応食を嬉野で取り組まれる場合は、是非協力したいと思います。
   久米島は9,000人弱の小さな島ですが、まとまりやすく、地域の方々の連携がしやすい環境でしたの
  で、この取り組みができたと感じています。

 ◎村川氏
   私も、イタリア語やスペイン語による説明など喜んで協力したいと思います。

 ◎関根氏
   嬉野も久米島と同じように「小さなまち」であり、まとまりがありますので、ユニバーサルデザインに取り
  組むことができると思います。私たち一人ひとりが「小さなまち」のつもりで、自分が変わること、自分が
  意見を出すことによって、周りの人たちを変えていくことができます。まちが変わることにより、近隣のま
  ちの方々にも影響を及ぼすこともできます。
   「小さいまち」だからこそ、声をあげることによって何かを変えられる、嬉野がその実例となるよう一生
  懸命努力していただければと思います。