総合シンポジウム~佐賀からの提言~

 ○ コーディネーター 
   第5回ユニバーサルデザイン全国大会推進委員会委員長 大草 秀幸 氏

 ○ パネラー
   まちづくり分科会コーディネーター 古瀬 敏 氏
   ものづくり分科会コーディネーター 細山 雅一 氏
   こころづくり分科会コーディネーター 井手 将文 氏
   パーキングパーミット分科会コーディネーター 山崎 泰広 氏

議 論 概 要

 

各分科会における議論等の報告


 【コーディネーター】 第5回ユニバーサルデザイン全国大会推進委員会委員長 大草 秀幸 氏
   
         大草 秀幸 氏                        総合シンポジウム


【パネラー】
 まちづくり分科会コーディネーター
 古瀬 敏 氏
 まちづくり分科会では、梶本さんからは愛媛県松山市とブラジルのクリチバのまちづくりの事例を、谷口市長から嬉野市で取り組まれたハード・ソフト両面の整備状況と今後の計画等を、三原さんからは嬉野地区電線共同溝整備事業で携われた歩道整備の効果等を、山本さんからは少子高齢化、人口減少による問題や外国人観光客への対応等を報告していただきました。
 また、分科会の中では、「各自治体が策定する総合計画の中にユニバーサルデザインを取り入れて議論すべきである」「まちづくりでは優先度が重要であり、成果を次につなげないと意味がない」との指摘がありました。また、商店街におけるお茶、トイレ等のおもてなし、住宅のユニバーサルデザイン改修に伴う補助金制度の創設等の提案がありました。




【パネラー】
 ものづくり分科会コーディネーター
 細山 雅一 氏

 ものづくり分科会では、松尾さんからは佐賀県ユニバーサルデザイン推奨品選定制度の概要と「人にやさしい椅子」の開発経緯を、深海さんからは商社と窯元が共同で取り組まれている「匠の蔵」シリーズの開発経緯とその成果を、見野さんからは「産・官・学・民」が集まった万力プロジェクトによるキャリーバッグの開発経緯等を、飯田さんからはペットボトルにキャップをするシリコンでできた「KISS」の開発経緯と販路拡大等を報告していただきました。
 また、分科会の中では、「ユニバーサルデザインとは、我々の身近にある課題を解決することであり、そこからものづくりが始まる」「作る側と使う側がお互いにコミュニケーションしながらものづくりを進めていくことがユニバーサルデザインに繋がる」「中小企業が多いという地域性を活かしたものづくりをすれば、佐賀の産業は楽しいものになる」ことを感じました。




【パネラー】
 こころづくり分科会コーディネーター
 井手 将文 氏


 こころづくり分科会では、藏野さんからは阪神淡路大震災を経験し地域全体で新しいまちづくりを行っていく経緯を下に、これまで小中学校を対象に取り組まれているユニバーサルデザイン教育等を、巖淵さんからは大学進学を目指す障害のある子どもたちを支援するプログラム「DO-IT Japan」の活動状況等を、谷岡さんからは小学校から大学まで通った中で周りの方がどのように接し、共に育って行けたかという過程等を報告していただきました。
 また、分科会の中では、いろんな人と出会い、共に行動する機会を増やす方策として、「いろんな立場の人の話を聞ける機会を小中学校でも増やしていきたい」「様々な体験を持つ人たちが先生として授業をする機会を増やしていきたい」「障害を持つ人たちの大学進学を増やしていきたい」等の意見がありました。




【パネラー】
 パーキングパーミット分科会
 コーディネーター
 山崎 泰広 氏
 パーキングパーミット(以下「PP」)分科会では、田端さんからは佐賀県におけるPPの現状等を、松村さんからはPPの国内の現状や欧州を中心とした違法駐車に対する罰則制度等を、松田さんからはPP未導入の東京都の現状等を、梅津さんからは福島県におけるPPに関する利用実態調査結果等を報告していただきました。
 また、分科会の中では、PP制度の将来的な目標として、PP制度を欧米のように全国に展開し、全国的な相互利用を可能とすること、公安委員会の協力を得て違法駐車に罰則や罰金を科すこと、将来的に日本で発行するPPで海外を旅行できるよう海外との相互利用の実現、そして、駐車禁止除外指定者標章に代わってPP制度が全国的なシステムになること等を議論しました。
                                              

質疑応答


 ◎大草氏
   私は、今朝、まちづくり分科会に参加しましたが、来場者から「各自治体が策定する際、グランドデザイ
  ンを描いて議論すべきである」との指摘がある一方で、「グランドデザインを描きながら長期的な予算編
  成はなかなか難しい」との意見もありました。また、嬉野の商店街に掲出されているサインボードに「お茶
  をどうぞ」などの案内がされていることは大変素晴らしい取り組みであるとの感想があり、特に観光地に
  とっての歓迎のユニバーサルデザインはとても大事なことだと思いましたが、古瀬さんはどのような意見
  をお持ちでしょうか。

◎古瀬氏
   グランドデザインを描いて総合計画を策定することは当然のことです。これから高齢化や人口減少社
  会になることは数字を見れば分かりますが、佐賀県はかなり厳しい現実を直視していると思います。予
  算に関して、地方はもとより国全体にお金が足りない状況の中で、どうにか工夫しながら新しい政策や
  ユニバーサルデザインをやらなければ、今よりも住みやすいまちどころか、今より住みにくいまちしかで
  きなくなります。そこに使うお金は税金ですので、納税者の合意を得て、各自治体は政策を進めていか
  なければならないと思います。また、観光地では知らない場所に来てまちを歩くことも楽しみの一つです
  ので、休める場所や気軽に入れるお店があるということは、観光者にとっては非常にありがたいことで、
  観光地のユニバーサルデザインとしては素晴らしい取り組みだと思います。

 ◎大草氏
   ものを作る側と使う側が一つになってものづくりをすることを「共感」ではなく「共関」と報告されました
  が、細山さんはものづくりについてどのような意見をお持ちでしょうか。

 ◎細山氏
   ユニバーサルデザインはものづくりの前提となり、メーカー側の立場では基本品質・基本性能として捉
  えることができます。また、前提としながらどういう魅力ある商品を作るのかと問われたら、私は「楽しく
  快適に暮らせるようなものづくり」と回答します。日々の生活の中で、ユニバーサルデザインを前提とし
  て暮らしやすく楽しく過ごせるようなものづくりや環境づくりを実現することが必要ですので、行政側もそ
  の実現のためにどのような支援が必要なのかを考えていただきたいと思います。
   分科会でのテーマであった「地探地創」は、開発から販売までを一環して活動することによって徐々に
  成果が出てきているとの実感も得られています。今の活動をこれからも継続発展させながら、新しい活
  動も加え、佐賀から全国に向けて情報を発信し、佐賀県に住みたいという人が増えてくることが、我々
  が一番願っていることではないかと思います。

 ◎大草氏
   こころづくり分科会では、子どもたちにいろんな人と出会い、行動する機会を増やしていきたいと報告
  されましたが、何か付け加えたいこと等はありませんか。

 ◎井手氏
   子どもたちにいろんな人と出会い、行動する機会を増やすことでは、様々な体験を持つ人材を育成して
  いくことが大切だと思います。個人的な考えですが、例えば、外国語指導助手として語学の先生を配置し
  ている学校がありますが、この方々は教員免許を取得されているわけではなく、生の外国語を生徒に聞
  かせようということで来られています。また、同じように障害者スポーツで優秀な成績を残している方々
  や様々な体験を持つ方々などと共に、触れ合ったり、行動することにより、子どもたち自身で何か気づく
  ことがあると思いますので、ユニバーサルデザイン教育に関しては、教員免許の有無に関わらず、様々
  な取り組みがあるのではないかと思います。

 ◎大草氏
   今朝、嬉野の旅館で開催された分科会に参加しましたが、その旅館の身障者用駐車場には、PPを掲
  出していない車を見かけしました。身障者用駐車場を利用する方々が、この制度を理解してルールを守
  ることはとても大事なことだと思いますが、これを徹底することは大変なことだと思います。このことにつ
  いて、山崎さんはどのような意見をお持ちでしょうか。

 ◎山崎氏
   PP制度ができる前はショッピングセンターなどで不正駐車している方々もお客さんであることから注意
  しづらいという話しがありました。しかし、この制度ができたことにより、「ルールですから守って下さい」
  と言えるようになり、非常に素晴らしい取り組みだと言っていただきました。身障者用駐車場にPPを掲出
  していない車いす使用者が車を停めていることがありますが、この方々は県に申請すればPPが交付さ
  れますので、協力施設者からもPPの申請を働きかけていただければ、不正駐車は少なくなっていきま
  す。また、パネラーの方から、「最近、若い人が不正利用者に対し注意している」と話され、大変嬉しく思
  いました。さきほど井手さんが語られたように、こころづくりの教育の中で身障者用駐車場の必要性など
  を教えていただければ、PP制度はより良い方向で広がるものと思います。

<温泉地とユニバーサルデザインに関する質疑応答>

 ◎大草氏
   今回の全国大会は、「温泉地とユニバーサル」をテーマに掲げていましたが、実際に温泉地で全国大
  会を開催しての感想をお願いします。

 ◎細山氏
   温泉はリラックスして楽しく過ごすためのものであり、ものづくりも究極的には同じではないかと感じてお
  ります。

 ◎山崎氏
   嬉野温泉は車いすで宿泊できる部屋が20客室整備されていることは、大変素晴らしいことです。また
  、平地にあることで、車いす使用者、高齢者等の方々には移動が容易であるなどの利点もありますので
  、これからも温泉地でユニバーサルデザインを進めてほしいと思います。

 ◎古瀬氏
   海外の多くの国では、温泉は治療の一環として水着で入りますので、温泉ピクトグラムも効果的です
  が、逆転の発想として、例えば、諸外国の文化である水着で入れる温泉浴場を整備すれば、これまで裸
  での入浴を敬遠してきた方々を温泉地に連れてくることが可能になるのではないでしょうか。

 ◎井手氏
   私は教育の中で、五感で感じるワークショップを実施していますが、大会期間中、温泉に入っていると
  、湯煙で一瞬視覚が制限される等、温泉も五感で感じて楽しめるものと思いました。
                       
                              

まとめ


 ◎大草氏
   今回の全国大会は、「温泉地とユニバーサル」をテーマに掲げていましたが、この大会で温泉ピクト
  グラムを提唱するとともに、これからは「配慮」ではなく「前提」としてユニバーサルな社会を実現してい
  くことが重要だと感じました。嬉野では、ユニバーサルデザイン客室が20客室整備されていますが、
  これからも増えていき、本大会を契機にユニバーサルデザインの取り組みが全国で加速していくもの
  と思います。また、次回の全国大会の開催地は決定していませんが、大会終了後、全国の自治体か
  ら開催したいとの手がたくさん挙がり、定期的に開催できる大会になってほしいと願っています。