パーキングパーミット分科会 「パーキングパーミット制度の取組成果と
                   今後の普及拡大の課題とその対策」

 ○ コーディネーター 
   (株)アクセスインターナショナル代表取締役 山崎 泰広 氏

 ○ パネラー
   全国脊髄損傷者連合会佐賀県支部長 田端 弘 氏
   タウンクリエイター代表 松村 みち子 氏
   東京都身障運転者協会副会長 松田 文夫 氏
   福島県保健福祉部高齢福祉課主任主査 梅津 弥 氏

議 論 概 要

議論主旨



【コーディネーター】
 (株)アクセスインターナショナル
 代表取締役 山崎 泰広 氏
 パーキングパーミット(以下「PP」)制度とは、公共施設やショッピングセンター等の身障者用駐車場に駐車する際の駐車許可証制度であり、県が発行するPPを掲示することで、駐車場を利用できる方を明らかにして違法駐車をなくし、身体障害者、高齢者、難病者、知的障害者、助産婦やけが人等、本当に必要な方のために、駐車スペースを確保する制度です。
 日本初のPP制度が平成18年7月に佐賀県でスタートし、平成22年12月現在、16県2市に広がっています。また、九州や他の地域でも相互利用がスタートしています。
 PP分科会では、全国で広がるPP制度の意義や現状説明から、取り組み成果や全国に向けての課題について議論します。
                                                      

事例発表・話題提供



【パネラー】
 全国脊髄損傷者連合会
 佐賀県支部長 田端 弘 氏
 佐賀県で全国初のPP制度が導入され4年が経過し、県職員が一生懸命普及拡大に取り組まれていますが、あまり浸透していないようです。車いす使用者が買い物等に行く場合、夕方の時間帯や土日祝日はなかなか身障者用駐車場に車を停めることができない状況にあります。身障者用駐車場がなぜ3.5mの幅を必要とするのか理解されていない方も少なくないようです。
 PPの発行数に対し、利用できる身障者用駐車場が少ないことが問題ですが、佐賀県では、協力施設の一般駐車場にPP専用の駐車スペースを新たに確保するPPプラスワン運動に取り組まれていますので、本当に有り難く思っています。




【パネラー】
 タウンクリエイター
 代表 松村 みち子 氏

 佐賀県のPP制度は、身障者用駐車場の対象者を明確にしたこと、外見では分からない障害者等が安心して利用できる条件を整備したこと、移動制約者のクオリティ・オブ・ライフを高めたこと、この制度が16県2市に広がり波及効果があったことが大きな成果であると考えます。一方で、身障者用駐車場を最も必要としている車いす使用者が利用者の増加により車を停められない事態が起きていること、法的な強制力を持つ罰則がないこと、全国で利用できる仕組みになっていないことなどの課題もあります。
 欧州、韓国などPP制度を導入している諸外国の多くは違法利用者に対し多額の罰金や重い罰則が科されることがあり、欧州ではEU加盟国を中心に他国でも利用できる統一の駐車カードシステムを導入していますので、将来的には日本もこのようなシステムになると思います。





【パネラー】
 東京都身障運転者協会
 副会長 松田 文夫 氏


 佐賀県から始まったPP制度は画期的な制度であることから、東京都身障運転者協会では、平成22年9月に東京都に対してPP制度の要望書を提出しました。
 平成19年の交通法の改正により、道路上はすべて駐停車禁止となり、駐車禁止除外指定者標章の発行が車両ナンバーから個人の名前に変わり、車両を持たない障害者に対しても発行され利用できるようになりました。また、平成22年の駐車禁止除外指定者標章の交付基準の改正により、運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態で駐車する場合は、運転者の連絡先又は用務先を記載した書面を前面ガラスの見やすい箇所に掲出することになりましたが、プライバシー保護の時代に逆行しているように感じます。
 限られた駐車スペースを有効に利用するためには、適材適所の誘導が必要であり、凄み分けを等しく行うためにも、四葉マーク、車いすマークを明記し、社会のルールを守り、乱用はやめてほしいと考えます。




【パネラー】
 福島県保健福祉部高齢福祉課
 主任主査 梅津 弥氏



 福島県では、平成21年7月に「おもいやり駐車場利用制度」を導入し、その後の制度の普及状況を把握するため利用実態調査を行った結果、利用証利用率31.6%(前年度16.6%)、潜在対象者率33.2%(38.9%)、不適正率35.2%(44.6%)、また、おもいやり駐車場の利用率は38.5%(25.7%)となり、県民にこの制度が少しずつ浸透していることが分かりました。
 一方、制度の現況を把握し、制度改善の参考とするため協力施設にアンケート調査を行った結果、不適正利用が減少した40.5%(36.3%)、変わらない48.3%(16.6%)、また、県に求める取り組みとしては、PRの強化が7割を超えましたので、様々な機会を活用して積極的に制度を周知して参りたいと思います。
 また、福島県では、栃木県、群馬県、山形県の4県で利用証の相互利用を始めており、PP制度を導入している岩手県やこれから導入される自治体にも相互利用を広げていきたいと思います。

<佐賀県の新たな取り組みの紹介>

◎山崎氏
   佐賀県では、有明佐賀空港において、おそらく全国初となる身障者用の手動運転装置付のレンタカーサ
  ービスを開始しています。レンタカー貸出時に身障者手帳等を提示していただくとPPが交付され、車での移
  動が容易になりますので、大変素晴らしい取り組みと思います。

                                               

質疑応答


 ◎山崎氏
   福島県の利用実態調査では、身障者等で利用証を取得していない人が3割強となっていますが、この方
  々は申請すればPPが交付されますので、まずは申請していただくよう働きかける必要があります。また、P
  P制度未導入の東京都でも身障者の方々には必ず車いすマーク等を貼った上で、身障者用駐車場に車を
  停めていただくことが大事であると思います。

◎松村氏
   欧州の駐車カードは、医療機関を通して発行されます。しかし、日本では車いすマーク等はどこでも売ら
  れていますので、健常者がこのマークを車に貼って身障者用駐車場に停めることができます。PP制度
  は完ぺきではありませんが、この制度を始めたことが素晴らしいので、これからの方向性としては、明確
  なルールづくりを国と協議していただきたいと思います。

 ◎山崎氏
   PP制度は欧米のほとんどの国で採用され、警察や公安員会と連携ができており、違法駐車には罰則・
  罰金が科されます。例えば、米国では、ショッピングセンター、遊園地等の入口付近はすべてPP専用の駐
  車スペースとなっています。佐賀県でPP制度を導入する際、身障者用駐車場の利用者の範囲を広げる
  と駐車スペースが不足するとの意見がありました。小さなスペースを取り合うのではなく、必要とする方
  が増えたら、欧米のようにニーズに応じてPP専用の駐車スペースを増やしていく考えが必要です。

 ◎田端氏
   佐賀県では、PP制度の導入後も不正利用は無くなっていません。しかし、PP制度の導入前までは、車内
  に身障者手帳を置いていく方が大半でしたが、今ではこのような方を見かけることはほとんど無くなりまし
  た。また、茶髪をした若者が不正利用者に対し注意する姿を見かけることもあります。県職員の努力等に
  より、少しずつですが、PP制度が県民に侵透している成果ではないでしょうか。

 ◎山崎氏
   身障者用駐車場の必要性を理解し、PP制度のルールを遵守することで不正利用は無くなってくると思い
  ます。また、身障者の方々は「権利だから使う」ではなく、制度として利用証を取得して身障者用駐車場を
  利用していただくことが必要です。

 ◎松田氏
   東京都でもPP制度を導入できるよう道路公団、政党等に働きかけていますが、実現するには時間がか
  かるような状況です。

 ◎山崎氏
   大都市がPP制度を導入することを心配する理由は、身障者、高齢者等の方々が非常に多く、その方々
  がPPを取得した場合、駐車スペースを確保できないと考えているからです。しかし、東京都では、公共交
  通機関が整備されていますので、例えば、健常者の方々は公共交通機関をできる限り利用し、身障者等
  の方々が駐車スペースを優先的に利用していただくという考えもありますので、これからも活動を続けてい
  きたいと思います。

 ◎松村氏
   調査の積み重ねがとても大事であり、不正利用者に対する説得の材料にしてほしいと思います。不正利
  用には、「知らなかった」「罪悪感」「居直り」の3タイプに区別でき、「知らなかった」「罪悪感」タイプの方々
  には身障者用駐車場の必要性を説明すれば概ね理解を示していただけます。また、PP制度が社会でより
  一層認知されるためには、子どもの頃からのユニバーサルデザイン教育とともに、欧州や韓国のように違
  反者に対し罰則規定が整備されることが必要であると思います。

 ◎山崎氏
   今後のPP制度についてですが、将来的には駐車禁止除外指定者標章とPP制度が統合し、PP制度に統
  一されるべきと考えます。また、欧米では一般道路にもPP用の駐車スペースが用意されていますが、国土
  交通省による新しい専用駐車場区間として「駐車のシルバーシート」制度が既に東京都で開始されていま
  す。この専用駐車区間の対象者が高齢者や妊婦等の方々に限定されているようにも思えるのですが、松
  村さん、いかがでしょうか。

 ◎松村氏
   新しい専用駐車区間は、平日でも車が停まっていない駐車スペースがあり、その一部を高齢者等の方
  々のために確保し利用していただくものですが、この制度により移動制約者が社会進出のきっかけづくり
  になると考えます。しかし、この制度は暫定的なもので、PP制度により本当に必要な人に駐車スペースを
  確保することが望ましく、PP制度が全国規模になるように国に働きかける必要があると思います。

 ◎山崎氏
   PP制度を導入していない東京都においても、例えば、私が住んでいる近くのショッピングセンターでは施
  設の一番近い場所に車いすマークの駐車場が確保されていますが、「車いすマークの駐車場には車いす
  使用者でない方の利用は控えてください」とのテープが10分置きに放送されています。大変素晴らしい取
  り組みですので、PP制度を導入している自治体も協力施設に同様なことを働きかけていただきたいと思い
  ます。

<参加者を交えての質疑応答>

 ◎参加者
   私は、車いす使用者の夫とともに、不正利用者と何度も喧嘩をし、その度に悲しい想いをしてきました。
  不正利用をしている方々は健常者ですので、健常者から変わらなければと思いNPO法人を設立し、「私は
  モラルがあります」というステッカーを作成し、インターネットで情報発信したところ、若い世代の方々から、
  私と同じような経験をし、不正利用者に対して注意することができなかったので、「ステッカーを貼る運動に
  参加します」との賛同の声をたくさんいただきました。また、車いすマラソンの選手でもある夫とともに、小
  中学校を訪問する際、生徒の皆さんに対し、身障者用駐車場の必要性や諸外国における不正利用者へ
  の罰則制度などを話していきたいと思っています。不正利用をなくすためのPR活動は確かに難しいことで
  ありますが、私たちも自治体と同様にこれからもPR活動を続けていきたいと思います。

 ◎山崎氏
   大変素晴らしい活動だと思います。最近は、若い人が不正利用者に対し注意する光景を見かけること
  があり、大変嬉しいことです。恥ずかしいことではなく、カッコいいことだと思って注意していただきたいと思
  います。
                       
 ◎参加者
   鹿児島県では、PP制度を導入する際、先進県の課題である身障者用駐車場と施設との距離、駐車ス
  ペースの幅の広さなどを調査しながら取り組みました。距離に関しては、佐賀県と同様に施設に一番近い
  場所に駐車スペースを確保することになりましたが、駐車スペースの幅の広さについては、佐賀県や熊本
  県では「PPを保有している方々に身障者用駐車場を占領されて困っている」との声を聞きましたので、鹿
  児島県に工夫していただけないかと依頼しました。その結果、鹿児島県では、下肢障害者の対象範囲を
  少し狭め、車いす使用者を対象とした赤色のPPを発行することになりました。
   なお、国土交通省では、平成22年3月に身障者用駐車場の利用啓発用のポスターを作成されています
  が、車いすマークを掲示している駐車場は、「車いす使用者のみならず、高齢者やけが人等を含む障害 
  のある方も利用いただけます」と掲載されています。この考えは、鹿児島県のPP制度と相違し、このまま
  ではダブルスタンダードになりますので非常に困っています。  

 ◎山崎氏
   国土交通省は、PP制度の考えを考慮の上、パスターを作成したのではないかと思いますが、鹿児島
  県のようなPP制度の考えを持つ自治体に対しては、このポスターは適していないと考えます。また、鹿児
  島県の車いす使用の方々にお願いですが、各施設に赤いPPがたくさん目につくようになれば、身障者用
  駐車場を増やしていただけます。是非、赤いPPを使っていただきたいと思います。

 ◎参加者
   この分科会では、PP制度の今後の方策について議論がなされていないようです。私は、PP制度は利 
  用者認定システムであり、駐車場の数や不正利用の抑止について問題があると考えます。また、平成1
  8年に国土交通省では各自治体でPP制度を採用するなら国でまとめます旨のコメントを出していますの
  で、PP制度を全国レベルにする必要があります。まずは、PP制度を導入している自治体が隣接する自
  治体に対し、PP制度の導入を働きかけるような声掛け運動を展開することが必要と思います。さらに、7
  0歳以上の高齢者が運転する車に貼られる高齢運転者標識は、PPと曖昧になり兼ねないため、このこ
  とも踏まえて今後の方策を考える必要があると考えます。

 ◎参加者
   長崎県では、内部障害で健康な方々に対してもPPを交付した結果、車いす使用者が身障者用駐車場
  に車を停められない状況にあることから、下肢障害の方々から、「この悪法を止めてほしい」と依頼され
  ています。私としては、佐賀県が身障者用専用駐車場とPP専用駐車場を区別して整備していただくよう
  要望します。

 ◎山崎氏
   佐賀県でPP制度を導入する際、身障者手帳には身体、内部の区別が記載されていますので、特権で
  はなくニーズとして発行するようお願いしています。内部障害、高齢者等の方々でも、健康な方は身障者
  用駐車場の利用は控えてほしいし、そのことがモラルにも繋がると思います。そして、佐賀県で取り組ま
  れているPPプラスワン運動により一般駐車場を対象としたPP専用駐車場を増やしていきたいと思いま 
  す。

                               

まとめ


 ◎山崎氏
   PPの今後の目標として、すべての人が車で外出しやすい環境を確立するため、まずは、欧米のように
  PP制度が全国的な制度となり、全国的な相互利用ができるようにしていきたいと思います。また、公安 
  委員会の協力を得て、違法駐車には罰則や罰金を科したいと思っています。
   さらに、PPの相互利用をする自治体が集まっての協議会を設置し、日本のものと分かるようなPPを作
  成し、海外との相互利用ができるようにしていきたいと考えています。国内・海外に障害者、高齢者等の
  方々が自由に外出し、行動できるように、企業・団体にも協力いただき、PP制度を進めていただければ
  と思います。